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トマト養液栽培でのアルカリ障害対策

監修:渡辺和彦、牧浩之
事例提供:兵庫県立農林水産技術総合センター

症状

養液栽培のトマトで、上位葉が全体に黄化し、減収する現象が数作続けて発生したため、原因の究明と対策を検討した。
症状は夏場に激しく、そのときには養液のpHが高くなり、 8以上を示すこともあった。

養液栽培トマト 上位葉の養分含有率
  P Ca Mg Fe Mn Zn B Cu
% ppm
正常葉 0.63 3.52 1.00 135 64 41 82 3
黄化葉 0.55 1.67 0.73 76 35 23 25 3

(P:リン酸、Ca:カルシウム、Mg:マグネシウム、Fe:鉄、Mn:マンガン、Zn:亜鉛、B:ホウ素、Cu:銅)

診断(作物体)

症状を見ると、単一養分の過剰・欠乏症とは考えにくい症状であった。原因を調べるため障害葉と正常葉の養分含有率を比べると、Ca、Fe、Mn、Zn、Bなどが正常葉に比べ黄化葉で低下していた。

水耕トマト 原水の分析
pH EC アルカリ度(pH4.8) P K Ca Mg Mn Fe B Cu Zn
  (mS/cm) (CaCO3mg/L) ppm
7.2 0.643 410 0.3 5.5 9.7 1.9 0.1 0.1 <0.1 <0.1 <0.1

診断(養液・原水)

養液に使う原水を分析したところ、ほかの成分に問題はないがアルカリ度が非常に高いことが判明した。
このことから、障害の原因は原水の不良により培養液のpHが上昇し、各種養分の吸収バランスが崩れたために引き起こされたと考えられた。
この場合、水源を変えて良質な水を確保することが根本的な対策となるが、今回の場合困難であったため、培養液のpHを下げる方法を検討した。ト

対策と効果

そこで、リン酸で培養液のpHを下げることにした。前もって緩衝曲線を作成して投入量を決めて、pH7.0を目標に管理することで、今回の症状は大幅に軽減した。