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シュンギクの額縁症(マンガン欠乏)対策

監修:渡辺和彦、牧浩之
事例提供:兵庫県立農林水産技術総合センター

症状

現地でシュンギクに発生する、額縁症と呼ばれる症状。施設の軟弱野菜連作圃場で多く発生する。葉の周辺が黄化し、 緑を縁取るような症状から額縁症と呼ばれる。
(写真は永井耕介氏原図 兵庫農技センター)

診断(再現)

現地の土壌を持ち帰り、ポット試験で再現に成功。
土壌が障害の原因であった。
(写真は永井耕介氏原図 兵庫農技センター)

シュンギク額縁症の発生状況と土壌養分(土壌採取は播種1カ月後)
ハウス 額縁症発生程度 pH EC 硝酸態チッソ 硫酸根 交換性マンガン
mS/cm mg/100g mg/kg
A
B
極多
極多
6.03
6.19
2.69
3.47
71.2
117.6
585.3
483.8
7.65
5.15
C
D

6.98
7.21
0.95
0.71
21.6
22.1
211.8
70.2
6.81
8.23
E
F
G
極少
なし
なし
7.10
7.42
7.26
1.89
0.37
0.33
46.4
16.9
13.7
239.6
27.6
20.4
7.83
4.53
10.04

診断(土壌)

額縁症の発生が多い土壌では、ECが高く、硝酸態チッソや硫酸根が高い。

額縁発生個体の養分含有率
ハウス Mg Ca Mn Fe
ppm
健全株
発生株
0.52
0.49
0.96
1.09
23.8
17.9
129
124

(Mg:マグネシウム、Ca:カルシウム、Mn:マンガン、Fe:鉄)

診断(作物体)

障害株は健全株に比べ、マンガン含有率が低かった。

シュンギク額縁症に対する葉面散布剤の効果
ハウス 葉面散布後日数 処理区
無散布区 Mg Mn Mg+Mn
H 0 3 3 3 3
H 8 3 3 0 0
I 0 2 2 2 3
I 8 1 1 0 0
J 0 2 2 2 3
J 8 0〜1 1 0 0

Mg:0.2%硫酸マグネシウム液 Mn:0.2%硫酸マンガン液
Mg+Mn:0.2%硫酸マグネシウム液+0.2%硫酸マンガン液
額縁症発生程度: 0…発生なし 1…発生わずか 2…数株発生 3…ほぼ全株に発生

対策

原因である可能性のある、マグネシウムとマンガンの葉面散布処理を行ったところ、マンガン散布により額縁症が抑制できることが明らかになり、この症状がマンガン欠乏により引き起こされることが確認された。

シュンギク額縁症に対する硫酸マンガンの施用効果
  額縁症 葉の色調
発生株率% 症状 L値 a値 b値
無処理 56.8 ++〜+++ 42.7 -6.5 13.9
土壌施用6g/m2
土壌施用12g/m2
葉面散布 0.2%液2
8.0
1.1
3.4


40.4
38.8
41.0
-6.0
-6.2
-6.3
11.6
9.7
12.4

症状:(軽い)+ 〜(重い)+++
色調 L値:明度 -a値:緑色度 b値:黄色度

また、硫酸マンガンの土壌施用でも効果が認められた。
発生土壌中には交換性マンガンが存在するにもかかわらず、土壌養分が過剰に集積した結果、養分の吸収バランスを崩すことにより発生したと考えられる。