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山田式家庭菜園教室
〜Dr.藤目改訂版〜

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接ぎ木苗を作ってみませんか?

接ぎ木苗の有効性

現在、果菜類ではキュウリ、スイカ、メロンなどのウリ類と、ナス、トマト、ピーマン(一部)で接ぎ木苗を利用した栽培が行われています。主要病害虫については接ぎ木によって被害を回避していますが、すべての病害虫に抵抗性を示す台木の種類・品種はないので、接ぎ木苗の利用で、完全に土壌伝染性病害虫を回避することはできません。しかし、一つでも二つでも病害回避が可能であれば、農薬に頼ることが軽減されることになります。

接ぎ木成否のカギは、接ぎ木作業そのものもさることながら、接ぎ木後の養生が最重要です。アマチュアでは設備面でもこの養生がネックになるので、ハードルは高くなります。家庭菜園では店頭での接ぎ木苗購入が無難ですが、それでも接ぎ木をしてみたいという方のために基本を紹介します。

接ぎ木で問題になること

親和性

親和性には、二つの段階が考えられます。野菜の接ぎ木には同じ種類の野菜の間で行われる場合と、異なる種類の野菜(例えばカボチャにキュウリを接ぐ)の間で行われる場合とがあります。

台木と穂木の切り口をくっつけてから切り口の癒合が始まるのは、3日後くらいです。この段階で接着できない場合、つまり拒絶反応を起こす場合は、接ぎ木は成功しません。切り口が癒合し、その部分の細胞が肥大し始め、完全に癒着するのが、1週間後くらいです。

第二段階は、接ぎ部が構造的に正常な状態に復元されるようになることです。生長が再開されても、接ぎ木をしない場合に比べて生育が正常に進まず、収量に大きな影響が現れる場合があります。

また、第二段階をクリアしたとしても、カボチャ台にスイカを接いだ場合は注意点が生じます。雑種カボチャ(西洋カボチャ×日本カボチャ)台木を強勢台木、日本カボチャ台木を弱勢台木として区別することがあります。これは両者とも収量面では問題ないのですが、雑種カボチャ台木ではどうしても生育が旺盛になりすぎるので、施肥管理を日本カボチャ台木と同様にすると問題が生じるからです。

ToMV抵抗性と接ぎ木

トマトモザイクウイルス(ToMV)については、トマトの品種改良が進み、抵抗性を持つ品種が多数作出されていますので、ToMVに対しては、接ぎ木をしなくても問題ありません。しかし、接ぎ木をすることによって、台木品種と穂木の品種双方がToMV抵抗性を持っている場合、第1表にあげたように、台木品種と穂木品種が持っているToMV抵抗性の遺伝子型をそろえないと、接ぎ木不親和を起こし、急速に萎ちょうしてしまいます。あらかじめToMV抵抗性遺伝子型をカタログなどで知っておく必要があります。

第1表トマトのToMV抵抗性型による接ぎ木の適否

トマトのToMV抵抗性型による接ぎ木の適否

具体的な接ぎ木の方法

いろいろな接ぎ木の方法が考案され、実際に行われていますが、初めて接ぎ木をする時は「呼び接ぎ」が作業しやすく、失敗がほとんどありません。どの果菜類にも応用できますが、一般的にナスでは「挿し接ぎ法」、トマトでは「割り接ぎ法」「呼び接ぎ法」、キュウリやスイカでは「割り接ぎ法」「呼び接ぎ法」が行われています。下記が主なポイントになります。図解によって手早く作業をしましょう。

作業ポイント
  1. (1)作業は日陰で、風が当たらない所で行う。
  2. (2)よく切れる新品の安全カミソリを使う。
  3. (3)作業は穂木の方から始める。
  4. (4)特に「割り接ぎ」「挿し接ぎ」の場合は穂木の調製が終わったら、切り口を口にふくんで乾かさないようにする。このときツバで濡らさないように。
  5. (5)接ぎ木が終わった苗は、すぐに鉢上げをせず、苗を横に寝かせ、湿ったタオルで覆う。しばらくすると切り口の樹液が固まるので、それから鉢上げした方がよい。
  6. (6)接ぎ木部を水で濡らさないように潅水する。
  7. (7)活着するまで、日陰でトンネルをかけ、白寒冷紗などで遮光し、活着したら時々日光に当てて慣らす。もし途中でしおれるようなら、霧吹きで軽く葉を湿らせておくとよい。
接ぎ木苗の作り方
スイカ
ナス
トマト