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野菜

山田式家庭菜園教室
〜Dr.藤目改訂版〜

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よい土がよい野菜を育てる

土づくりの第一歩は「深く耕すこと」

土の役割は何でしょうか。植物は土の中に根を張り、養水分を吸収して生長します。野菜でも、ダイコンやゴボウなど根を利用するものはもちろんのこと、果菜類や葉菜類でも、根を土中に広く伸ばすようにしてやれば、地上部のよい生育を約束してくれます。根が地中に広く伸びることで、茎葉がしっかり支えられて大きく育ちます。また広く発達した根から、土の中に含まれている養分を吸収できます。

したがって、深く耕すことは大切な作業です。深く耕すと土はやわらかくなりますが、これは土中に大きなすき間が増えるためです。耕さない土でもすき間はたくさんありますが、大きなすき間は潰れて、小さなすき間ばかりになってしまっています。このような土では、根は十分に働くことができません。

空気を含む大きなすき間部分を「気相」、水を含む小さなすき間部分を「液相」と呼び、土の本体部分「固相」と併せて「土の三相」と呼んでいます。第1図のような三相の状態が野菜作りには理想的ですが、このような状態を維持するためには、堆肥など有機物を継続的に土に投入する必要があります。

第1図野菜作りに適した土の三相分布

野菜作りに適した土の三相分布

畑の土で重要なことは保水性があり通気性がよいことですが、そのためには固相、気相、液相がバランスよく含まれていることが重要になります。畑の土が粘土化すると、団粒構造が少なくなって水はけが悪くなり、根が呼吸できなくなり、さらに地上部の生育も十分には進まなくなります。よい土には土の塊である単粒と、さらに単粒が多数集まってできた団粒からなる団粒構造があり、団粒間に毛管孔隙(こうげき) が十分にあることが必要です(第2図)。団粒間の狭いすき間である毛管孔隙の水分は土に保たれていますが、広いすき間である非毛管孔隙では流失してしまい空気で満たされてしまいます。同時に狭いすき間である毛管孔隙では、毛細管現象により水分が吸着されています。

第2図団粒構造

団粒構造

有機物の効果、堆肥の作り方

1)有機物の効果

土壌が物理的に悪化するのを防いだり、微量要素の欠乏を防止したり、さらに有用微生物の活動を促進するためには、畑に堆肥を入れることが重要です。堆肥を入れることにより、土壌の通気性は増し、保水性も高まります。また、各種の微生物が増加することで、土壌の化学的変化にも緩衝作用が増します。

有機物の施用効果として、次の3点があげられます。

  1. 土の団粒化を促し、土のやわらかさ(保水性・通気性)を持続させます。
  2. 土中の微生物の活動エネルギーとなって、有機物が分解され、チッソ・リン酸・カリなどの元素になって野菜に吸収されます。しかし、吸収されずに余った養分は、土中の微生物が吸収して一時的に貯蔵されます。
  3. 万が一肥料をやりすぎたとき、肥えあたりを和らげる働きをします。また、有機物から出る有機酸や腐植酸といった成分が、野菜の生育を促してくれます。
2)堆肥の作り方

今は各種の堆肥が販売されていますので、その利用もできますが、簡単に堆肥を作ることも可能です。作り方は、まず穴を掘るか、もしくは1mくらいの木枠を作って、その中に土、野菜くず・枯れ葉・わら、その上に少量のチッソ肥料をまいて重ねていき、これを繰り返します。枠の上まで達すると上から踏み固め、また枠を上に積み上げていきます。このとき、野菜くずは水分をきってから使うのがコツで、雨がかからないようビニールなどを全体にかけます。発酵すると発熱するので、それが収まってからしばらくおき、完全にポロポロの土状になってから使います(第3図)。

第3図堆肥の簡単な作り方

堆肥の簡単な作り方

菌根菌がマメ科野菜と共生し、チッソを吸収して根に供給していることはよく知られていますが、最近ではそれ以外にも有用な微生物が土壌中にいることが知られてきています。

根の先端の多くは「ムシゲル」と呼ばれる粘液性の物質で覆われています(第4図)。これは根の表皮細胞から剥がれ落ちた表皮組織や分泌された粘液と土壌中の微生物などからなる複合体で、根を保護するだけでなく特殊な物質代謝の場になっています。

「ムシゲル」の中には水分以外に多糖類などの有機物が含まれています。根から放出される有機物に対し、根圈にいる微生物はこれを分解し根が吸収しやすい形に変え、根はこれを吸収しています。根はこのように微生物と共生関係にあります。このような有用微生物は根の周辺に高い密度で存在しており、根圈微生物と呼ばれます。

第4図ムシゲル

ムシゲル

土壌中には多様な微生物が生息しており、多くの微生物は野菜にとって重要な働きをもって共生していることが分かってきています。そこで野菜と微生物の両方を考えて、最近では必要以上の殺虫剤や殺菌剤の散布を控え、土壌消毒も有用な微生物の生存を侵さない範囲に留めます。

堆肥の施用、pH調整と畝の立て方

畑の粗起こしの作業は第5図に示した通りです。畝あるいはハウスなどの向きは、光条件あるいは排水の流れる方向を考えて決めます。南北向きとすると、各畝の野菜が冬季でもお互いに影の影響を受けることがなくなります。堆肥などの有機物は毎作施し、土全体によく混ぜておくのがポイントです。定植する3〜4週間前に1m²当たり2〜3kgの堆肥を畑全面にばらまき、スコップで30cm程度まで深く耕し、風化した上層部の土を下層部へ、下層部の土を上層部へと入れ替えて、空気に触れさせてやります。このとき、苦土石灰(消石灰でもよい)を一緒に施して土のpH(土壌酸度)調整をします。苦土石灰の施用量は1m²当たり100〜120gを目安としますが、土壌酸度を調べて調整してみるのも楽しいかもしれません(第1表)。

第5図堆肥の施用方法

堆肥の施用方法

第1表pH調整に必要な石灰量(g/m²)

pH調整に必要な石灰量(g/m²)

耕うんと施肥は基本を守ることが大切で、定植する3〜4週間前に、畑に堆肥と苦土石灰を施用して耕うんすることで、未熟な堆肥や有機肥料が根に与える障害を防ぐことができます。さらに砕土時か、定植や直まき1週間前に、畑に肥料をまいて軽く耕しながら畝を立てます。排水の悪い所では高畝にします。

土の酸度はpH値で表し、pH4〜6は酸性土、pH8〜9をアルカリ土と呼びます。一般的に野菜を作る場合、pH6.0〜6.5程度が理想的な土であると考えられます。第6図に、主な野菜の好適土壌酸度を示しました。

第6図主な野菜の好適土壌酸度

主な野菜の好適土壌酸度

日本の土壌は酸性になりやすい条件がそろっています。もともと土壌の多くが火山性の母岩からできていて酸性が強いうえに、温暖で雨が多い気象条件だからです。雨水の中には炭酸が入っているため、雨が土壌に直接落ちると、粘土に吸着されているカルシウム、マグネシウム、カリウムが追い出され、炭酸が吸着されてしまうため酸性化が促されます。土壌が酸性になると、作物はホウ素やモリブデンの欠乏症が発生しやすくなります。さらにマンガン、鉄、銅、亜鉛は酸性で溶けやすいため、過剰に吸収されて障害が発生しやすくなります。

計画的な輪作で連作障害回避を

トマトやナス、キュウリ、スイカ、エンドウなどを連続して同じ畑で作ると、生育が極端に悪くなったり、枯れてしまったりします。このような現象を「連作障害」と呼びます。

この障害を起こす原因は、前作の野菜に寄生していた病害虫が土の中に残り、次に植えた同じ種類の野菜に被害を加えるからです。また、前作の野菜の根から分泌される特殊な物質が土中に残り、それが次に植えた同じ種類の野菜に悪影響を与える場合、つまり自家中毒<忌地(いやち)>による場合も考えられます。ほかにも、同じ種類の野菜は同じような肥料成分を多く吸収するため、土の中の肥料成分の均衡が崩れる場合など、種々の原因が単独に、あるいは複合的に作用して障害を引き起こします。いずれにせよ、同じ種類の野菜を毎年同じ場所で作ることは避けたほうが好ましいと言えます。しかし、第2表のように、連作してもそれほど大きなトラブルを起こさない野菜もありますので、参考にしてください。

第2表連作を嫌う野菜

連作を嫌う野菜

輪作で連作障害を防ごう

養分欠乏・塩類集積を効果的に防ぐ輪作

養分吸収や病虫害の違う野菜を輪作することで、土壌の物理性、化学性が改善されます。種類が異なれば根の生育範囲も変わり、土壌中の生物間のバランスも、よく保たれるからです。輪作を行うにはまず畑をいくつかに分けて計画していきます。例えば5等分して、それぞれ分類の異なる野菜の栽培計画をしていきます(第7図)。普通は、畝の方向は南北向きですが、場所によっては、排水のよい方向と日当たりも考えて決めましょう。

第7図輪作のために畑を5等分

輪作のために畑を5等分

5枚の畑で春作と秋作の輪作を考えた組み合わせを、第8図に示しました。

例えば、畑Aの春作でトマトを栽培した後の秋作にはカリフラワーかブロッコリーかキャベツを作ります。その翌年、畑Aの春作では、畑Bで作ったキュウリかエダマメを作ります。これを繰り返していけば、同じ畑で同じ野菜を栽培するのは5年後になり、連作障害は起こりません。可能な限り接ぎ木苗を利用すれば、もっと自由に栽培できる野菜を選べるでしょう。管理作業の少ない冬に、楽しみながら次の菜園計画を立てておくことをおすすめします。

また輪作の合間には、太陽熱による土壌消毒なども適宜行いましょう(第9図)。

第8図輪作計画図

輪作計画図

年ごとに反時計回りに、作付けする。畑Aの野菜を翌年は畑Eで、畑Bの野菜は翌年に畑Aで栽培するというふうに。

第9図太陽熱利用の土壌消毒(適期は梅雨明け〜8月)

太陽熱利用の土壌消毒(適期は梅雨明け〜8月)

間作・混作にコンパニオンプランツや対抗植物を

間作とは主な野菜を栽培する畝に時期をずらして、他の野菜を少量栽培することで、混作とは数種の野菜を同時に栽培することです。コンパニオンプランツや対抗植物も単独では効果は限られますので、ほかの処理と併用するようにしましょう(第3表)。

第3表コンパニオンプランツはなぜよいのか

(小林「はなとやさい」2011年、4頁を修正)

コンパニオンプランツは野菜との養分の取り合いが少なく、また根の生育範囲が異なるので、地上部の生育も異なり、お互い陰になることはありません。
対抗植物とは、根の働きにより土壌中の有害センチュウを減らす作用をもつ植物のことで、マリーゴールドはその一つです。