農業・園芸用語集
ふ
ファイトトロン
人工気象室ともいい、室内の温度・湿度・炭酸ガスなどの気象条件を任意に自動制御できる施設のうち、植物を対象とするものをいう。室はガラス室として自然光を用いるものと、暗室として人工光を使うものとがある。
ファイトプラズマ
イネ黄萎病・シュンギクてんぐ巣病などの病害を引き起こす細菌類に比較的近縁な病原微生物で、以前はマイコプラズマ様微生物(MLO)と呼ばれた。ヨコバイやウンカなど師管液を吸う昆虫によって媒介され、これら媒介昆虫の体内でも増殖する。
フィジー
カリフラワーの花蕾発育の後期に、高温・乾燥・栄養不良などで、花蕾の発育が十分に行われなかった場合、苞が発達して鳥の毛羽の生えたような状態になる。これをフィジーという。
フィラー
フラワーアレンジメントにおいて、小さな花の総称のこと。つなぎの役目をする。
斑入り(ふいり)
斑とは葉や花びら、茎、幹に出る、本来の色と異なる色のこと。植物に斑が出ている状態を「斑入り」という。実生で遺伝する場合もある。
フィルムコート種子(フィルムコートしゅし)
殺菌剤や着色剤を加えた水溶性ポリマー溶液で、タネに薄い被膜をコーティング処理したもの。発芽時の病害防除効果とともに、薬剤の飛散が極めて低いため、播種作業における安全性も高い。
風化(ふうか)
岩石は長年月の間に、温度・雨・流水・波・結氷などによって、次第に崩れて細かな粒子になると同時に、成分にも変化を起こして土になる。この現象を風化という。
風媒花(ふうばいか)
風で花粉が運ばれることで受粉する花。
フェロモン
動物の体内で作られ、体外に分泌、放出され同じ種類の動物に各種刺激反応を起こさせる物質のこと。昆虫でよく知られ、性フェロモン・集合フェロモンなどがあり、環境汚染のない新しい農薬として注目されている。現在ハスモンヨトウやコナガの防除にフェロモンが利用されている。
不完全花(ふかんぜんか)
雄花と雌花が、例えばキュウリやカボチャのように別々である場合、このような花を不完全花または単性花(たんせいか)という。
副花冠(ふくかかん)
ヒガンバナ科のスイセンの花には、のどの部分に濃黄色のさかずき形のものがついている。花冠そのものではなく、花冠のように見えるので副花冠という。
複合耐病性(ふくごうたいびょうせい)
二種以上の耐病性を持つことをいう。トマトの複合耐病性としては、半身萎凋病の他、萎凋病・タバコモザイクウイルス・葉かび病・条腐病・斑点病などの耐病性を兼ね備えた品種が発表されている。
複合肥料(ふくごうひりょう)
三大要素であるチッソ・リン酸・カリのうち、2成分以上を含んでいる肥料のこと。
覆土(ふくど)
タネをまいた上にかぶせる土を覆土という。トレイ育苗では一般的にバーミキュライト、畑では土と砂をまぜたものを用いることが多い。微細種子の場合は覆土をしないことがある。
複葉(ふくよう)
葉身が分かれておらず1枚だけの単葉に対し、2つ以上に分かれた葉身をもつ葉を複葉という。
覆輪(ふくりん)
葉や花びらに入る斑模様のひとつ。周囲に地の色とは異なる色が入るものをいう。
不耕起栽培(ふこうきさいばい)
水田や畑を耕さないまま、農作物を作付ける栽培方法。耕起しないことでの省力が図られるとともに、前作物の根が枯れた跡に根穴構造が残ることで排水性が向上し、団粒構造が維持されやすいとされる。米国では広く利用されている。国内でも行われている。
富士砂(ふじすな)
培養土の基質材料として用いられる田土や畑土の排水性を良好にするために混合される川砂の一種。火山に由来し、粒径が粗く、山野草の植え込みやロックガーデン用に使われる。
節成育苗(ふしなりいくびょう)
主にキュウリの育苗についての用語である。節成り、つまり雌花が節ごとに着生するか否かは、遺伝的な能力と育苗環境の二つによるが、短日処理(たんじつしょり)や低温によって、節成り苗を期待する育苗方法を節成育苗という。
節成性(ふしなりせい)
キュウリなどで、節ごとに着花結実する性質を節成性という。
腐植化作用(ふしょくかさよう)
土中の有機物が腐植に変化する働きをいう。
腐植質(ふしょくしつ)
土壌中において、主として微生物作用により動植物遺体が暗色ないし黒褐色の無定形の腐植質になる。これが土壌の物理性(通気性・透水性・水分保持量・力学的性質)、土壌微生物に大きく関与する。
不織布(ふしょくふ)
繊維を織ったり編んだりせずに、板状に加工したもの。農業においては保温や防虫のためのベタがけ資材などで利用される。
双葉(ふたば)
子葉のうち、一般的に2枚の葉を展開する双子葉類の子葉に使う呼称。
普通栽培(ふつうさいばい)
栽培の時期や、方法が自然の気象に合っている場合、これを普通栽培という。たとえば、トマトでは春から夏にかけてタネまきから収穫の全部を済ませる栽培が普通栽培であり、苗床で育苗して出来るだけ早く植え付けるのが露地早熟栽培、さらに育苗を早めてトンネルの中へ植え付けるのがトンネル栽培である。また、ハクサイを9月の上旬にまきつけるのは普通栽培であり、1月に温床で育苗し2月にトンネル内に植え付けるのはトンネル早出し栽培である。
ブッシュ状(ブッシュじょう)
丈低く株元から枝が密生して茂った状態。
物理的防除(ぶつりてきぼうじょ)
太陽熱による土壌消毒で病害虫を死滅させたり、被覆資材で害虫の侵入を防いだりと、農薬を用いずに、熱や光、あるいは障害物といった物理的手段を利用して行う防除方法。
ふところ枝
野菜では、ナス・ピーマンのように枝に開花結実させる作物では、内部に伸びた枝が混みすぎると日当たり不良となり同化作用が鈍るため、開花・結実がうまく進行しない。このような内部に伸びた枝をふところ枝という。これは放任しないで積極的に切除して、株全体の採光や通風をよくすべきである。
不稔(性)(ふねん(せい))
花粉や雌しべが正常でないため、受粉してもタネができない場合、これを不稔といい、この性質を不稔性という。
踏込温床(ふみこみおんしょう)
育苗床の作り方の一つで、ワラや落ち葉を醸熱材料(じょうねつざいりょう)として発熱させ、その熱を利用して床土を温め苗を育てる。
冬咲系(ふゆざきけい)
キンギョソウやスイートピー等、無加温のガラス室や温室で栽培して、冬〜早春に出荷するのに適する系統をいう。冬の短日条件下でも開花する性質を持ったものである。
冬芽(ふゆめ)
植物の休眠の一形態。冬を越すために、芽をかたい鱗片で覆い、さらに、その表面をろう様物質(クチナシ)や樹脂(トチノキ)を分泌したり、毛を有したり(ヤナギ)して保護するものなどがある。
不溶性りん酸(ふようせいりんさん)
りん酸三石灰(Ca3P2O8)やりん灰石(Ca10P6O24F2)のように、水に溶けないりん酸をいう。
腐葉土(ふようど)
広葉樹の落ち葉が堆積して発酵分解され土状になったもの。保水性と通気性に富み他の用土と混合して使われる。弱酸性で多くの植物に適応する。
プライミング種子(プライミングしゅし)
塩類溶液に一定期間浸漬するなどの方法で、タネの内部生理を発芽直前の段階まで進めておいたもの。通常のタネに比べて斉一に発芽し、不良条件下でも発芽しやすい性質を持つ。トマト・タマネギ・ニンジンなどで実用化されている。「プライミング」は「呼び水」や「下準備」の意味。
ブラインド
分化した花芽が光線の不足などによって、その発育が悪く、完全な花にならない現象をブラインドといい、グラジオラスやアイリスなどは、栽培上、特にこの点について注意を要する。
プラグトレイ
プラグとはクサビの意味。小さい四角錐または円錐状に整形された連結ポットのことで、ピートモスなどの用土を入れて苗を育てる。
ブラシノステロイド
ブラシノライドとも呼ばれる植物ホルモンの一種でセイヨウナタネの花粉から抽出された。他の植物ホルモン類に比べ極微量で作用し、植物体全体の伸長生長や細胞分裂、増殖やタネの発芽などを促進する働きがある。
ブルームレス台木(ブルームレスだいき)
キュウリ用のカボチャ台木で接ぎ木することによって、果実の表面に出るブルーム(白い粉状のもの)の発生を抑え光沢をよくし、商品価値を高める。そのような台木品種として、スタークやエイブルがある。
フレーム
板やワラなどで周囲を囲み、上をビニールで覆い、その中で育苗したり冬の寒さから保護するのに用いるもので、太陽熱を入れやすくする。
フロアブル剤
水和剤と同じく溶剤に溶けにくい農薬の有効成分を微粉化し、これを水に高濃度で分散させた剤型。液状のため、水和剤に比べて薬液調整が容易で操作上も安全である。
ブロッキング
育苗の後期に、株間に包丁などで切れ目を入れて断根する作業をいう。(断根・だんこん)。苗の生育を一時的に鈍らせたり、苗の根張りをよくするために行われる。
ブロッチ
花びらに入る濃色の斑点。
不和合性(ふわごうせい)
不和合性とは、雌しべ、雄しべが共に健全でありながら受精しないことであり、自家受粉で受精しないことを自家不和合、他家受粉で受精しないものを交配不和合という。受精する場合は、それぞれ自家和合または交配和合という。これは遺伝する性質の一つで、キャベツ・ハクサイ・ダイコンなどの一代雑種はこの性質を利用して作られる。
分球(ぶんきゅう)
球根植物の繁殖の仕方で自然に数が増えること。その過程は鱗葉の基部にできた子球原基が肥大するもの(チューリップなど)や、発芽伸長した芽の基部が肥大するもの(グラジオラス)など、様々な形態がある。
分げつ(ぶんげつ)
植物の根元付近や切り株から伸びた新芽・側枝を「ひこばえ」と言うが、これが伸びて枝数が増えることを分げつと言う。
粉剤(ふんざい)
粉末の形で散布する農薬のことをいう。飛散しやすいので風のない時に散布する。また、播種・定植時に畝面に用いて害虫の駆除を図る場合も多い。
分枝性(ぶんしせい)
枝の発生の数や強さは栽培にも左右されるが、もともと遺伝的な性質であり、この性質を分枝性という。